ニュース 一覧へ戻る 2016/11/01 第144回大原美術館ギャラリーコンサート ご来場ありがとうございました GALLERY CONCERT 10月29日(土)に第144回大原美術館ギャラリーコンサート「アンドレア・バッケッティ ピアノ・リサタイル」が開催されました。アンコール曲のご紹介です。 第144回大原美術館ギャラリーコンサート 「アンドレア・バッケッティ ピアノ・リサタイル」 出演 アンドレア・バッケッティ(ピアノ) ■日 時 2016年10月29日(土) 18時30分開演 ■会 場 大原美術館 本館2階ギャラリー ■曲 目 ●演奏者の希望により、前半に1曲追加されました。(※印) J.S.バッハ:イギリス組曲 第5番 ホ短調 BWV810 J.S.バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816 J.S.バッハ:イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807 J.S.バッハ:フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813 ※ J.S.バッハ:フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812 J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971 * * * * * モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485 モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333 ■アンコール曲 シューベルト:4つの即興曲D935 より 第2曲 変イ長調 J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 第1変奏 ヘンリー・マンシーニ:ムーン・リヴァー まさに「非凡」という言葉がぴったり。演奏はもちろん、キャラクターもユニークなイタリアのピアニスト、アンドレア・バッケッティのリサイタルは、前半のバッハを、全曲ノンストップで弾く、という異例の公演でした。 1曲追加されて計6曲、リピートをカットした演奏は、曲間の拍手なしで約1時間。初めから全体がひとつの作品であったかのように、すべての楽想がごく自然に結び合い、イタリアを思わせる色彩豊かな音色で、壮大なバッハの宇宙を垣間見せてくれた濃密な時間でした。 さまざまな声部が織りなす対位法の展開にどんどん引き込まれ、高度なテクニックに目を奪われるひまもないほどの圧倒的な演奏。美しい音の奔流に押し流されていく快感は、1時間におよぶ連続演奏のなせるわざでしょうか。新たなタイプのバッハ弾きが眼前に現れた衝撃を、興奮とともに味わいました。 13歳のとき出会った巨匠ホルショフスキから「バッハを勉強しなさい」と言われ、その遺訓が今も彼の中では特別な光を放っているとのこと。「現代のピアノだからできることを最大限に生かしたい」―― 終わりなき探求の道を進む、彼のバッハの深化が本当に楽しみです。 前半あれだけ弾き通したというのに疲れた様子もなく、15分の休憩後、ワクワク気分が抑えられない子どものような笑顔で楽屋から出てくると、小柄な身体をコミカルにはずませ、軽やかな足取りでピアノに歩み寄って後半がスタート。モーツァルトも続けて演奏されました。 音楽の自然な息遣いが心地よいのはバッハと同じですが、色とりどりのきらめきが天から降ってくるようだったバッハに対して、モーツァルトは、旋律が一気にはばたいていく感じです。 大きなスケールで自在にテンポを操る独特のグルーヴ感。一瞬のひらめきで弾いているように見られがちな“奇才”の演奏が、どんなにテンポを上げても名技を誇示するところがなく、むしろ熟慮され、入念にコントロールされていることに驚きを禁じ得ません。 かつてカラヤンに神童と言わしめた才能は、人と競うコンクール向きではなかったかもしれませんが、ピアノを弾くのが嬉しくてたまらない、そんな彼のピュアな精神もまた、バッハやモーツァルトに真に自由な躍動を与えることができる、一種の天才の在り方なのだと思い知らされます。 当夜の演奏に接したお客様には、古典派作品を詰め合わせたプログラムとは思えない新鮮な愉悦をご堪能いただけたのではないでしょうか。 満員の盛大な拍手に呼び戻されて始まったアンコール。 まずはシューベルトの即興曲から。静まり返った夜の美術館に広がる、慰めに満ちた響きが胸を打ちます。 シューベルトは子どものころから弾いているレパートリーなのだとか。人生の時を長く共にしてきた音楽だけに、バッケッティならではの“カンタービレ”が息づく演奏でした。 そして、彼を世に知らしめた名刺代わりの「ゴルトベルク変奏曲」で再びバッハの魔法を聴かせたあと、最後に披露したのは映画音楽のスタンダードナンバー、「ムーン・リヴァー」。 クラシックのコンサートで突然ムーディな現代曲をもってきても、演奏のクオリティがまったく変わらないのがバッケッティの真骨頂です。 あとで知らされてちょっと意外だったのは、アレンジ曲に安易なアドリブを入れない、ということ。音楽は、自ら譜面に起こすことで理解が深まるというのが彼の持論で、あの「ムーン・リヴァー」も、楽譜にない音は弾いていないのだそうです。 さりげなく弾かれる小品さえ、ひとつひとつ心をこめて準備され、厳選された音だけが私たちに届けられていたのでした。 ♪次回ギャラリーコンサートは12月17日(土) 第145回大原美術館ギャラリーコンサート 「北村朋幹(ピアノ)&上野通明(チェロ)デュオ・リサイタル」です。 業界大注目の若き俊英たちがデュオで登場! ご来場をお待ちいたしております。 アンドレア・バッケッティ 喝采を浴びるバッケッティ アンコール演奏も渾身の情熱をこめて 前の記事 次の記事
10月29日(土)に第144回大原美術館ギャラリーコンサート「アンドレア・バッケッティ ピアノ・リサタイル」が開催されました。アンコール曲のご紹介です。
第144回大原美術館ギャラリーコンサート
「アンドレア・バッケッティ ピアノ・リサタイル」
出演
アンドレア・バッケッティ(ピアノ)
■日 時 2016年10月29日(土) 18時30分開演
■会 場 大原美術館 本館2階ギャラリー
■曲 目
●演奏者の希望により、前半に1曲追加されました。(※印)
J.S.バッハ:イギリス組曲 第5番 ホ短調 BWV810
J.S.バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816
J.S.バッハ:イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807
J.S.バッハ:フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813 ※
J.S.バッハ:フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
* * * * *
モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333
■アンコール曲
シューベルト:4つの即興曲D935 より 第2曲 変イ長調
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 第1変奏
ヘンリー・マンシーニ:ムーン・リヴァー
まさに「非凡」という言葉がぴったり。演奏はもちろん、キャラクターもユニークなイタリアのピアニスト、アンドレア・バッケッティのリサイタルは、前半のバッハを、全曲ノンストップで弾く、という異例の公演でした。
1曲追加されて計6曲、リピートをカットした演奏は、曲間の拍手なしで約1時間。初めから全体がひとつの作品であったかのように、すべての楽想がごく自然に結び合い、イタリアを思わせる色彩豊かな音色で、壮大なバッハの宇宙を垣間見せてくれた濃密な時間でした。
さまざまな声部が織りなす対位法の展開にどんどん引き込まれ、高度なテクニックに目を奪われるひまもないほどの圧倒的な演奏。美しい音の奔流に押し流されていく快感は、1時間におよぶ連続演奏のなせるわざでしょうか。新たなタイプのバッハ弾きが眼前に現れた衝撃を、興奮とともに味わいました。
13歳のとき出会った巨匠ホルショフスキから「バッハを勉強しなさい」と言われ、その遺訓が今も彼の中では特別な光を放っているとのこと。「現代のピアノだからできることを最大限に生かしたい」―― 終わりなき探求の道を進む、彼のバッハの深化が本当に楽しみです。
前半あれだけ弾き通したというのに疲れた様子もなく、15分の休憩後、ワクワク気分が抑えられない子どものような笑顔で楽屋から出てくると、小柄な身体をコミカルにはずませ、軽やかな足取りでピアノに歩み寄って後半がスタート。モーツァルトも続けて演奏されました。
音楽の自然な息遣いが心地よいのはバッハと同じですが、色とりどりのきらめきが天から降ってくるようだったバッハに対して、モーツァルトは、旋律が一気にはばたいていく感じです。
大きなスケールで自在にテンポを操る独特のグルーヴ感。一瞬のひらめきで弾いているように見られがちな“奇才”の演奏が、どんなにテンポを上げても名技を誇示するところがなく、むしろ熟慮され、入念にコントロールされていることに驚きを禁じ得ません。
かつてカラヤンに神童と言わしめた才能は、人と競うコンクール向きではなかったかもしれませんが、ピアノを弾くのが嬉しくてたまらない、そんな彼のピュアな精神もまた、バッハやモーツァルトに真に自由な躍動を与えることができる、一種の天才の在り方なのだと思い知らされます。
当夜の演奏に接したお客様には、古典派作品を詰め合わせたプログラムとは思えない新鮮な愉悦をご堪能いただけたのではないでしょうか。
満員の盛大な拍手に呼び戻されて始まったアンコール。
まずはシューベルトの即興曲から。静まり返った夜の美術館に広がる、慰めに満ちた響きが胸を打ちます。
シューベルトは子どものころから弾いているレパートリーなのだとか。人生の時を長く共にしてきた音楽だけに、バッケッティならではの“カンタービレ”が息づく演奏でした。
そして、彼を世に知らしめた名刺代わりの「ゴルトベルク変奏曲」で再びバッハの魔法を聴かせたあと、最後に披露したのは映画音楽のスタンダードナンバー、「ムーン・リヴァー」。
クラシックのコンサートで突然ムーディな現代曲をもってきても、演奏のクオリティがまったく変わらないのがバッケッティの真骨頂です。
あとで知らされてちょっと意外だったのは、アレンジ曲に安易なアドリブを入れない、ということ。音楽は、自ら譜面に起こすことで理解が深まるというのが彼の持論で、あの「ムーン・リヴァー」も、楽譜にない音は弾いていないのだそうです。
さりげなく弾かれる小品さえ、ひとつひとつ心をこめて準備され、厳選された音だけが私たちに届けられていたのでした。
♪次回ギャラリーコンサートは12月17日(土)
第145回大原美術館ギャラリーコンサート
「北村朋幹(ピアノ)&上野通明(チェロ)デュオ・リサイタル」です。
業界大注目の若き俊英たちがデュオで登場!
ご来場をお待ちいたしております。