ニュース 一覧へ戻る 2010/07/09 “ドイツ中学生体験リポーター” 行ってきました !! (ご報告) その3 CONCERT REPORT ドイツ北西部、ルール地方(炭鉱と工業が盛んな地域)に位置し、ヴッパー川沿いに細長く開けた工業の街が、ヴッパータール(ヴッパー川沿いの谷)です。平地ばかりのドイツにあって、ヴッパータールの北西部には珍しく山が連なり、北海から吹く偏西風がこの山々にぶつかって雨を降らせるので、「ヴッパータールに生まれてくる子は長靴を履いて生まれてくる」といわれるほど雨の多い街。その例にもれず、私たちが滞在した3日ともずっと雨続きでした。 春先ヨーロッパの花々は、日本と違いいっせいに咲き始めるのだとか。黄色も白色も全ての色の花が一度に・・。しかし、残念ながら私たちの訪問は一足早かったようです。雨の中、足元を見るとわずかに水仙が黄色の可憐なつぼみを膨らませていたのが、印象的でした。 今回ヴッパータール交響楽団の定期公演で聴いた曲が、ウェーベルン「夏の風の中で」、メンデルスゾーンの交響曲第5番と、シューマンの交響曲第1番「春」の3曲。まさにこの季節にぴったりな上岡さんの選曲の巧さに、あらためて合点がいったのです。 近隣のオーケストラの垂涎の的となっているのが、1900年に建てられた豪奢なコンサートホール、シュタットハレ。もともとヴッパータールの街に栄えた紡績業により多数の富裕層が出現し、そうした人々が資金を出しあってこのホールが建てられました。 2度の大戦を経てすっかり見る影をなくしていましたが、1995年12月に修復され、昔の輝きを取り戻しています。エーリヒ・クライバー、オットー・クレンペラーなどの偉大な指揮者たちも、ヴッパータールで音楽的キャリアの第一歩を踏み出している由緒あるホールなのです。 滞在した駅前のビジネスホテルを後に、ヴッパータール駅前を過ぎ坂道を5分ほど歩くと、そのシュタットハレの威容が目に入りました。外観も立派ですが、内部はさらに。金色のモールディングで飾られた内装、天井いっぱいに広がる色鮮やかな天井画。輝くシャンデリア。到着時に受けた街の印象からは想像もつかない豪華な建物です。 かつて、このホールの設立を記念して、リヒャルト・シュトラウス本人が指揮台に立ったのだとか。さらに、その音響の素晴らしさは、想像を遥かにこえていました。岡田さんは「天から聴こえてくるような」と表現しています。実際、このホールはヨーロッパでもウィーン楽友協会と肩を並べる音響の良さを誇り、数々のCD録音が行われている名ホールなのです。 このホールで上岡指揮ヴッパータール交響楽団の公演を聴ける幸せ。毎回市民の皆さんで会場が埋め尽くされるはずです。ホールも、上岡さんも、オーケストラもすべてが、市民の誇りなのだから。 もうひとつの街の名物が、世界最初の懸垂式モノレール、シュベーベバンです。しかし、ヴッパータール駅に着く直前になって、たまたま電車で乗り合わせた女の子から、「今モノレールは修復中で、いつ再開されるかわからない」と知らされたのです。一同、ショックを隠せませんでした。苦しい市の財政状況も影響し、再開がいつになるかわからないのだそうです。東西に長く伸びるヴッパータール市の端から端まで延びているシュベーベバンは文字通り市民の足となっていて、オーケストラメンバーにとっても、少なからぬ影響があるのだとか。こんな財政難の中でも、「オーケストラへの支援は続けます」と断言する市長さんの言葉の重みをあらためて感じさせるできごとでもありました。 次回は上岡さんについてお話します。どうぞお楽しみに。 ヴッパータール交響楽団の本拠地、シュタットハレ ホール内は宮殿のような豪華さ 坂の上に見えてきたシュタットハレ、手前は岡田真実子さんです 前の記事 次の記事
ドイツ北西部、ルール地方(炭鉱と工業が盛んな地域)に位置し、ヴッパー川沿いに細長く開けた工業の街が、ヴッパータール(ヴッパー川沿いの谷)です。平地ばかりのドイツにあって、ヴッパータールの北西部には珍しく山が連なり、北海から吹く偏西風がこの山々にぶつかって雨を降らせるので、「ヴッパータールに生まれてくる子は長靴を履いて生まれてくる」といわれるほど雨の多い街。その例にもれず、私たちが滞在した3日ともずっと雨続きでした。
春先ヨーロッパの花々は、日本と違いいっせいに咲き始めるのだとか。黄色も白色も全ての色の花が一度に・・。しかし、残念ながら私たちの訪問は一足早かったようです。雨の中、足元を見るとわずかに水仙が黄色の可憐なつぼみを膨らませていたのが、印象的でした。
今回ヴッパータール交響楽団の定期公演で聴いた曲が、ウェーベルン「夏の風の中で」、メンデルスゾーンの交響曲第5番と、シューマンの交響曲第1番「春」の3曲。まさにこの季節にぴったりな上岡さんの選曲の巧さに、あらためて合点がいったのです。
近隣のオーケストラの垂涎の的となっているのが、1900年に建てられた豪奢なコンサートホール、シュタットハレ。もともとヴッパータールの街に栄えた紡績業により多数の富裕層が出現し、そうした人々が資金を出しあってこのホールが建てられました。
2度の大戦を経てすっかり見る影をなくしていましたが、1995年12月に修復され、昔の輝きを取り戻しています。エーリヒ・クライバー、オットー・クレンペラーなどの偉大な指揮者たちも、ヴッパータールで音楽的キャリアの第一歩を踏み出している由緒あるホールなのです。
滞在した駅前のビジネスホテルを後に、ヴッパータール駅前を過ぎ坂道を5分ほど歩くと、そのシュタットハレの威容が目に入りました。外観も立派ですが、内部はさらに。金色のモールディングで飾られた内装、天井いっぱいに広がる色鮮やかな天井画。輝くシャンデリア。到着時に受けた街の印象からは想像もつかない豪華な建物です。
かつて、このホールの設立を記念して、リヒャルト・シュトラウス本人が指揮台に立ったのだとか。さらに、その音響の素晴らしさは、想像を遥かにこえていました。岡田さんは「天から聴こえてくるような」と表現しています。実際、このホールはヨーロッパでもウィーン楽友協会と肩を並べる音響の良さを誇り、数々のCD録音が行われている名ホールなのです。
このホールで上岡指揮ヴッパータール交響楽団の公演を聴ける幸せ。毎回市民の皆さんで会場が埋め尽くされるはずです。ホールも、上岡さんも、オーケストラもすべてが、市民の誇りなのだから。
もうひとつの街の名物が、世界最初の懸垂式モノレール、シュベーベバンです。しかし、ヴッパータール駅に着く直前になって、たまたま電車で乗り合わせた女の子から、「今モノレールは修復中で、いつ再開されるかわからない」と知らされたのです。一同、ショックを隠せませんでした。苦しい市の財政状況も影響し、再開がいつになるかわからないのだそうです。東西に長く伸びるヴッパータール市の端から端まで延びているシュベーベバンは文字通り市民の足となっていて、オーケストラメンバーにとっても、少なからぬ影響があるのだとか。こんな財政難の中でも、「オーケストラへの支援は続けます」と断言する市長さんの言葉の重みをあらためて感じさせるできごとでもありました。
次回は上岡さんについてお話します。どうぞお楽しみに。
ヴッパータール交響楽団の本拠地、シュタットハレ
ホール内は宮殿のような豪華さ
坂の上に見えてきたシュタットハレ、手前は岡田真実子さんです