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2009/08/04

水島愛子さんが語るバイエルン響とヤンソンス   【その1】

バイエルン響には現在、2人の日本人演奏家が在籍します。第1バイオリン奏者の水島愛子さんは実に在籍31年。クーベリックと出会い、デイヴィス、マゼールを経てヤンソンスへ。「ヤンソンスはBRSOを国際的な檜舞台に引き上げる指揮者。完璧主義者で要求は厳しいがハートがあり、オケの信頼は最高に厚いです」とその手腕を高く評価しています。数々のエピソードを紹介してもらいましょう。

ヤンソンスは曲にまつわる多くのことをオケに伝えるそうです。「たとえば、作曲家が曲についての感想を書いた書簡などがあると話してくれる。知識を共有することで確かに響きが変わってくるんです。先日は『作曲家が書簡で、ここはシュットフォーゲルのようにって書いてるんだが、どんな鳥?』と尋ねていました。コンサートマスターが『ひょうきんでユーモラスな鳥です』って答えたら、『なるほどね!』って。本当によく勉強していて頭が下がります」
ヤンソンスが就任して、音楽面ではどう変わったのでしょうか。「貪欲に最高を求められます。もっと先を、可能性は無限大だと。毎日が真剣勝負ですね。徹底的に土台を築き、その上に生まれた余裕でオケのキャラクターが表現できるのだと言う。具体的に到達点を提示してくれるので大変だけど楽しいですね」。
楽譜の指示と違う演奏をする時も、団員に丁寧にその根拠を伝えるそうです。「時代背景や作曲家の意図を鑑みて、彼の本当の意図と私の解釈はこうだと。さらに、コンサートの時は演奏効果も考えて変更することもありますよね。だから、『今はこう言ったけど、本番では変えるかもしれない。だから僕をよく見ていて』と警告されるんです」。本当に大変なのよ、といいながらも、水島さんは楽しそうです。
バイエルン響はホール建設の正念場を迎えています。専用ホールを持つことは、団員にとっても念願なのでしょうか?「もちろんです!良く演奏会をするガスタイクホールは、ミュンヘンフィルの本拠地なので制約があるし、響きが最悪。バーンスタインが初めてここで振った時『燃やした方がマシ』と言い放ったのよ(笑)」
候補地も決まっているそうです。「バイエルン州立歌劇場の大道具置き場で、王宮の厩舎だった場所。とにかく実現のために州政府とヤンソンス自身が掛け合っているんです。莫大な費用が必要だし、ガスタイクを運営するミュンヘン市は収入が減るので大反対。道は困難です。でも、実現させたいとみんな願っています」

在籍31年になる1stバイオリン奏者、水島愛子さん

リハーサル風景
手前の女性が水島さんです

ミュンヘンフィルの本拠地でもあるガスタイクホール