ニュース 一覧へ戻る 2009/07/06 ヤンソンスが語るバイエルン放送響 【その1】 CONCERT REPORT マリス・ヤンソンスが倉敷市を訪れるのは3年ぶり2度目。今回は就任7年目で気心の知れたバイエルン放送交響楽団とやってきます。私はミュンヘンに何度かヤンソンスとバイエルン響を訪ねましたが、そのたびに幸せな気持ちになるほど、両者の信頼関係は素晴らしく、生み出す音楽も感動的です。両者は、2年前にCD「バビ・ヤール」(ショスタコーヴィチ)でグラミー賞にも輝きました。ローマ法皇の就任式でもベートーヴェンを演奏し、今年の春には東欧・ロシアツアーも成功させました。日本はもちろん、海外のクラシック専門誌でも年々ランキングを上げる、注目のコンビです。 (京都新聞社 井上理砂子 文・写真) ヤンソンスは現在、バイエルン響とともにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(オランダ)という世界のトップオケの首席指揮者を務めています。コンセルトヘボウ管は3年前に倉敷でもコンサートを行いましたね。ヤンソンスは2つのオケの魅力の違いをこう語ります。 「コンセルトヘボウはアカデミックで優雅な響きが持ち味です。バイエルン響は技術的な完成度の高さに加えて、情緒的で即興性に富む。理解力と、広く深みのある音。そういう意味では典型的なドイツのオケですね。表現力やクオリティに限界がありません。このオケとならなんでもできます。CDやDVDを数多く手がけ、世界中をツアーし、音楽祭にも積極的に出演してきました。このオケの素晴らしさを世界に知らせたいのです」 本拠地のミュンヘンを訪れると、ヤンソンスとオケがどれだけ愛されているかを肌で感じることができます。演奏会のあるホールはいつも満席。公開リハーサルも多く、ロビーもとてもにぎやかです。 「とはいえ一番の問題はホールですね。コンセルトヘボウとの大きな違いは、専用ホールがないこと。ひとつは他のオケとの共用だし、もうひとつは手狭です。就任当時から、オケのステイタスをあげるために質の高いホールが必要だと訴えてきました。候補地探しやバイエルン州との折衝に、私も奔走。オケと私は一緒に闘っているんです。日本は素晴らしいホールが全国に点在していますね。帰国のたびに、日本の音楽をめぐる環境の良さを報告し、行動を促しています」 ヤンソンスはリニューアルした倉敷市民会館にも興味津々です。オケにかけるヤンソンスの情熱が伝わり、団員の信頼も深いのでしょう。楽団運営は、オケのメンバー4人で作るコミッティー団が担いますが、演奏会終了後は必ず彼らが指揮者室を訪れ、成功をねぎらい合い、次に向けて綿密な打ち合わせをする姿をみることができます。 (つづく) 笑顔がチャーミング 演奏会 ロビーの様子 前の記事 次の記事
マリス・ヤンソンスが倉敷市を訪れるのは3年ぶり2度目。今回は就任7年目で気心の知れたバイエルン放送交響楽団とやってきます。私はミュンヘンに何度かヤンソンスとバイエルン響を訪ねましたが、そのたびに幸せな気持ちになるほど、両者の信頼関係は素晴らしく、生み出す音楽も感動的です。両者は、2年前にCD「バビ・ヤール」(ショスタコーヴィチ)でグラミー賞にも輝きました。ローマ法皇の就任式でもベートーヴェンを演奏し、今年の春には東欧・ロシアツアーも成功させました。日本はもちろん、海外のクラシック専門誌でも年々ランキングを上げる、注目のコンビです。
(京都新聞社 井上理砂子 文・写真)
ヤンソンスは現在、バイエルン響とともにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(オランダ)という世界のトップオケの首席指揮者を務めています。コンセルトヘボウ管は3年前に倉敷でもコンサートを行いましたね。ヤンソンスは2つのオケの魅力の違いをこう語ります。
「コンセルトヘボウはアカデミックで優雅な響きが持ち味です。バイエルン響は技術的な完成度の高さに加えて、情緒的で即興性に富む。理解力と、広く深みのある音。そういう意味では典型的なドイツのオケですね。表現力やクオリティに限界がありません。このオケとならなんでもできます。CDやDVDを数多く手がけ、世界中をツアーし、音楽祭にも積極的に出演してきました。このオケの素晴らしさを世界に知らせたいのです」
本拠地のミュンヘンを訪れると、ヤンソンスとオケがどれだけ愛されているかを肌で感じることができます。演奏会のあるホールはいつも満席。公開リハーサルも多く、ロビーもとてもにぎやかです。
「とはいえ一番の問題はホールですね。コンセルトヘボウとの大きな違いは、専用ホールがないこと。ひとつは他のオケとの共用だし、もうひとつは手狭です。就任当時から、オケのステイタスをあげるために質の高いホールが必要だと訴えてきました。候補地探しやバイエルン州との折衝に、私も奔走。オケと私は一緒に闘っているんです。日本は素晴らしいホールが全国に点在していますね。帰国のたびに、日本の音楽をめぐる環境の良さを報告し、行動を促しています」
ヤンソンスはリニューアルした倉敷市民会館にも興味津々です。オケにかけるヤンソンスの情熱が伝わり、団員の信頼も深いのでしょう。楽団運営は、オケのメンバー4人で作るコミッティー団が担いますが、演奏会終了後は必ず彼らが指揮者室を訪れ、成功をねぎらい合い、次に向けて綿密な打ち合わせをする姿をみることができます。
(つづく)
笑顔がチャーミング
演奏会 ロビーの様子