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2008/08/11

本の紹介 ♪ 「情熱のカデンツァ」 小菅 優 著 (NHK出版)

「情熱のカデンツァ」 小菅 優 著 (NHK出版/税込1470円)

10代の多感な年頃を、異国の地でピアノとともに生きてきた小菅優さん。ピアノを始めた幼少の頃のことから、10歳でドイツに渡るに至ったいきさつ、ドイツでの学校生活、コンサートのことなどについて、当時22歳の小菅さんが素直な言葉でつづっています。しかも、日常の出来事をただ述べるに留まらず、音楽を通じて培われた深い洞察力と鋭い感性で、彼女の生き方そのものが雄弁に語られていて、その成熟した哲学にはひたすら驚かされます。
タイトルに使われた「カデンツァ」とは、オーケストラと協演するコンチェルトでソリストがひとりで演奏する部分のこと。いわば、音楽家にとって「音楽の真実を求める一人旅」を意味し、彼女はいつもそのひとり旅の真っ最中なのだとか。孤独や苦難にもひるまず一人旅を続ける勇姿に、思わずエールを送りたくなります。ちなみに、この本の執筆後まもなく、彼女はカーネギー・ホール リサイタルデビューで大成功を収め、翌年にはモーツァルト生誕250年記念に沸くザルツブルク音楽祭に招待され、日本人ピアニストとして2人目のリサイタルという快挙を果たすのです。

「音楽で人々とつながること、喜びを共にすること」が自分の仕事、と迷いなく言い切る小菅さんのメッセージが、まっすぐに伝わってくる感動の1冊です。

「情熱のカデンツァ」
小菅 優 著 (NHK出版)