ニュース 一覧へ戻る 2006/07/18 ヤンソンス&コンセルトヘボウ直撃インタビュー!!【その2】 CONCERT 【活躍する日本人団員】 ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並んで『世界3大オケ』と賞される名門オケで現在、5人の日本人演奏家が活躍します。 第1首席ヴィオラ奏者の波木井賢さんは1985年入団。まず、本拠地コンセルトヘボウで生まれるまろやかな音に感服したといいます。「ホールが悪いと気張って弾いて雑味が出るが、コンセルトヘボウは楽に弾いて美しい音が出る素晴らしいホールです。マーラーなどでは、微細な、普段聞こえない音も表現できます」。 一方で『オランダ人気質』には戸惑いも。「『きょう合わなくても、明日合わなくても、いつか合えばいいじゃない』『失敗しても当然、人間だから。まず、楽しもう』という雰囲気。よく言えばおおらか、悪くいえば少々不真面目な個性派集団。でも、それが伝統とあわさり、かえってオケの強みになっているのでしょうね」 波木井さんは3人の首席指揮者を経験しています。「質を保ちつつ、欠点も改善されなかったハイティンクの終盤、イタリアオペラや現代音楽のレパートリーを広げ、オケに『歌うこと』を要求したシャイー、そしてヤンソンスは1988年の初共演からオケの特性をつかみ、使い切りました。ショスタコーヴィチの交響曲第5番でしたが、『この人はすごい』と直感しました。綿密なゲネプロ、最後まで最善を尽くし、本番でオケをさらに高い段階に引き上げる指揮者。イメージを伝えるのも上手で『ここで息絶える』『ここはウィンク』と指揮しながら、絶妙に動作を入れる。そのセンスはカラヤンを彷彿させます」 同じくヴィオラの若手、金丸葉子さんは3年前の入団。「オケの団員はまず、オランダ人、次にEU加盟国に開かれます。書類審査を含め、選考は4段階ありました」。金丸さんもまず、ホールと響き合うなめらかで稀有な音に魅了されたといいます。「そして、本番に驚くほどの力を出すオケです。それが『伝統』の強さなのかもしれませんね」。ヤンソンスについては「短いリハーサルで、音楽を変えるカリスマ性がある指揮者です。登場した途端、オケも聴衆も心奪われる。地位に甘んじず、学び続ける姿勢は音楽家として学ぶ点が多いです。でも、とてもユーモアのある人物」。 ヤンソンスも日本人演奏家も、普段は気さくで素晴らしい人たち。一流演奏家だからといって、偉そうな表情のひとつもありません。コンセルトヘボウの面々も同様。リハーサルの休憩時間のカフェテリアは大学の学食のような気楽さとにぎやかさでした。オケの人間性もコンセルトヘボウの強みなのでしょうね。 (京都新聞社 井上理砂子) (つづく) ♪次回は7月21日更新予定です リハーサル風景。 第1首席ヴィオラ奏者、波木井賢さん ヴィオラ奏者、金丸葉子さん 前の記事 次の記事
【活躍する日本人団員】
ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並んで『世界3大オケ』と賞される名門オケで現在、5人の日本人演奏家が活躍します。
第1首席ヴィオラ奏者の波木井賢さんは1985年入団。まず、本拠地コンセルトヘボウで生まれるまろやかな音に感服したといいます。「ホールが悪いと気張って弾いて雑味が出るが、コンセルトヘボウは楽に弾いて美しい音が出る素晴らしいホールです。マーラーなどでは、微細な、普段聞こえない音も表現できます」。
一方で『オランダ人気質』には戸惑いも。「『きょう合わなくても、明日合わなくても、いつか合えばいいじゃない』『失敗しても当然、人間だから。まず、楽しもう』という雰囲気。よく言えばおおらか、悪くいえば少々不真面目な個性派集団。でも、それが伝統とあわさり、かえってオケの強みになっているのでしょうね」
波木井さんは3人の首席指揮者を経験しています。「質を保ちつつ、欠点も改善されなかったハイティンクの終盤、イタリアオペラや現代音楽のレパートリーを広げ、オケに『歌うこと』を要求したシャイー、そしてヤンソンスは1988年の初共演からオケの特性をつかみ、使い切りました。ショスタコーヴィチの交響曲第5番でしたが、『この人はすごい』と直感しました。綿密なゲネプロ、最後まで最善を尽くし、本番でオケをさらに高い段階に引き上げる指揮者。イメージを伝えるのも上手で『ここで息絶える』『ここはウィンク』と指揮しながら、絶妙に動作を入れる。そのセンスはカラヤンを彷彿させます」
同じくヴィオラの若手、金丸葉子さんは3年前の入団。「オケの団員はまず、オランダ人、次にEU加盟国に開かれます。書類審査を含め、選考は4段階ありました」。金丸さんもまず、ホールと響き合うなめらかで稀有な音に魅了されたといいます。「そして、本番に驚くほどの力を出すオケです。それが『伝統』の強さなのかもしれませんね」。ヤンソンスについては「短いリハーサルで、音楽を変えるカリスマ性がある指揮者です。登場した途端、オケも聴衆も心奪われる。地位に甘んじず、学び続ける姿勢は音楽家として学ぶ点が多いです。でも、とてもユーモアのある人物」。
ヤンソンスも日本人演奏家も、普段は気さくで素晴らしい人たち。一流演奏家だからといって、偉そうな表情のひとつもありません。コンセルトヘボウの面々も同様。リハーサルの休憩時間のカフェテリアは大学の学食のような気楽さとにぎやかさでした。オケの人間性もコンセルトヘボウの強みなのでしょうね。
(京都新聞社 井上理砂子)
(つづく)
♪次回は7月21日更新予定です
リハーサル風景。
第1首席ヴィオラ奏者、波木井賢さん
ヴィオラ奏者、金丸葉子さん